【よみがえったホッカイエビ資源】
北海道網走市/西網走漁業協同組合能取湖地区


  網走市は、北海道の東部地区、オホーツク海沿岸の南部に位置し、人口約43,000人の水産業と農業、観光を中心とした産業の町である。網走市街地西方約10kmに位置する能取湖は、昭和49年の湖口開削で海水化されたことにより飛躍的に漁獲量が増え、ホタテガイの重要な種苗生産地である他、ホタテガイ、ホッカイエビ、シロサケ、カラフトマス、エゾバフンウニ等の漁獲があることでも知られている。

  西網走漁業協同組合能取湖地区は、組合員32名で構成され、ホタテガイ養殖(種苗生産)、ホタテガイ桁網漁業、エビ篭漁業、小定置漁業等を主な漁業として営んでいる。7月から8月にかけて操業したエビ篭漁業の水揚げ金額は、平成11年で1億350万円であり、全体の約12.8%を占めている。特に平成2年以降からは毎年約1億円前後の漁獲量を維持するまでに至っており、能取湖における重要な漁業として位置づけられている。

  青年部は、漁村の活性化を図る目的で昭和46年に組織され、現在33名の部員で運営している。主な活動としてはサンゴ草祭りへの参加やマガキ養殖試験のほか、水産試験場や水産指導所、市役所、大学と共同で実施するアサリ資源分布調査、ホッカイエビ資源量調査、クロガシラガレイ資源量調査が揚げられる。特に、ホッカイエビ資源量調査においては昭和59年から継続して取り組んでおり、青年部での重要な活動事項である。

  ホッカイエビ漁業は、昭和41年まで「船曵き網」により漁獲していたが、資源悪化に伴う漁獲量減少が原因で昭和42年から52年までを全面禁漁にした。その後、解禁して「エビ篭」による再操業とはなったが、当時の圧倒的な漁獲圧力では能取湖のホッカイエビ資源を減少させてしまう結果となり、昭和59年には年間漁獲量17.7トンまで落ち込んでしまった。このため、水産試験場、市役所、漁協職員、水産技術普及指導所等の協力を得て、この年からホッカイエビ資源量調査を実施し、それに基づく資源管理を展開することにした

  資源管理型漁業について関係機関に相談にのってもらったところ、ホッカイエビの生活史や成長、湖内の漁場環境、漁獲の実体などを見極めながら、資源量調査を実施し、総合的に操業方法を検討するべきであるという助言を受けた。そこで、関係機関と共同で生態調査を行ったところ、能取湖のホッカイエビは1才2ヶ月程度で雄として成熟し、その後、性転換してから2才3ヶ月で雌として成熟する3年の生活史をもっていることが分かった。このことから、この特徴を考慮した資源量調査計画を関係機関に考案してもらい、早速、指導を受けながらの調査を開始することとした

  資源量調査は、操業日誌の記帳、漁獲物調査、ソリネットによる分布調査の3本立てで行うこととした

操業日誌
  操業日誌の記載は、図−4に示したように漁業者一人一人が操業日ごとに漁獲量と尾数/kgを記載することとし、推定漁獲量と推定漁獲尾数、推定初期資源量等を求めるデータとして役立てることにした。取り組み当時は、実際の漁獲量と記載内容との値に若干の誤差のでることが度々あったが、最近では私たち漁業者が当番制で班長となり、他の漁業者一人一人の漁獲量を測ることでより精度の高い値を把握できるようにした。

漁獲物調査
  漁獲物調査は、実際に漁獲したエビを、1才雄エビ、2才雌エビ等の各年級群に選別し、その雌雄割合及び固体別重量について測定した。

分布量調査
  更に、私たち漁業者と各関係機関職員、漁協職員は、毎年10月に桁幅1.5mのソリネットを能取湖内17地点で100m曵きし、各年級群別の個体数、体長、重量、雌エビの抱卵数などを測定する分布量調査を実施した

  これら3種類の調査を毎年継続し、資源解析を依頼することで、資源量、年級群別生残率、再生産率、資源量の増減傾向の指標となる増加率を把握出来るようにした

  調査の結果、昭和59年当時は、初期資源尾数253万尾に対して漁獲量が約220万尾であり、その漁獲率は86.9%という高さであった。
  そこで、青年部では漁獲努力量を減らすべきだと判断して、1年当たりの操業日数、1人当たりの利用篭数、1日当たりの篭揚げ回数を段階的に引き下げ、網の目合いについては段階的に大きくするよう漁業協同組合へ働きかけた。こうして、昭和59年当時の操業日数50日/年、50篭/人、篭揚げ回数自由、網目12節という漁獲制限は、毎年の調査結果に基づいて、平成12年の操業日数17日/年、15篭/人、篭揚げ2回/日、網目10節という制限まで段階的に規制強化することとなった。
  このことにより、漁獲努力量(延べ篭数)は昭和59年当時の13,440篭からみて約6割である8,160篭まで減らすことが出来た。その結果、初期資源尾数は平成11年で当時の約5.8倍である1,461万尾まで増加し、単位努力量当たりの漁獲量を示すCPUE(kg/篭・日・人)は約5.9倍に、出荷量は17.7トンであったものが60〜70トン台まで、出荷金額は5,500万円であったものが1億円以上にまで増加する成果を達成することが出来た。漁獲量が増加したものの、近年のホッカイエビは増加傾向が続いており、資源は高位安定型で推移していることが調査から証明されている

  さらに、私たち青年部員は、率先して能取湖内の密漁監視を行ったり、出漁者全員が午前4時以降に出港する相互監視体制を提案するなどの活動を実践し、ホッカイエビ資源が再び危機的状況にならないよう努力している。

  資源量調査結果に基づく計画的な操業や密漁監視を実施したことで、再び豊富なホッカイエビ資源が甦り、少ない労力で沢山の漁獲量と出荷金額を得られるようになった。そして何よりも、資源管理の必要性と重要性を漁業者自らが認識する機会を得たことで、資源に対する意識の改革を図ることが出来た。

  現在の能取湖でのエビ篭漁業は、短期間に大量のホッカイエビを水揚げしていることから、販売価格が多少低くなってしまいがちとなっている。今後は、他の漁業との日程を調整しながら、販売方法、販売経路について検討する必要がある。
  また、最近の能取湖内では、ホッカイエビの分布密度が高いために成長が十分でなくなってきている可能性が指摘されつつある。今後は、関係機関、漁協職員と協力しあいながら調査を継続し、能取湖の大事なホッカイエビ資源を失わずに漁獲量を適正に維持していく努力も必要である。

(第6回全国青年・女性漁業者交流開会資料より)