地域別事例紹介

九 州               


▼ハマチの養殖から、トラフグの養殖へ転換
 佐賀県伊万里市波多津町は、伊万里湾に面し、漁業としては、延縄漁、一本釣り、刺し網漁が行われ、トラフグをはじめ、ハマチや真鯛、クルマエビの養殖なども行われています。
 現在、トラフグの養殖を行っている松本一成さんは、おじいさんの代までは、漁師をしていましたが、お父さんの時代からハマチの養殖をはじめした。松本さんが養殖を営む伊万里湾は、水深が浅いため夏は高温、冬には低水温となり、養殖魚にとってはストレスが大きいところです。従って、長期間の養殖はリスクが伴うと松本さんは判断し、比較的短期間で養殖が可能なトラフグに着目し、現在ではトラフグ1本に絞り養殖を行っています。
 松本さんがトラフグの養殖をはじめるに当たって、参考にしたのは波多津の隣にある長崎県の鷹島で行われていたしたトラフグの養殖でした。鷹島産のトラフグは、フグの養殖が盛んな長崎でも出荷量&品質共にトップクラスを誇っており、鷹島町を代表する特産品となっています。
 松本さんは、鷹島に知り合いがいたため、毎日のように通いトラフグ養殖の勉強をしました。
 トラフグを出荷するまでの期間は、およそ1年半。
 松本さんは、最盛期には養殖場に7万匹のフグの管理をしています。フグの養殖をはじめて10年以上経ちますが、餌のやり方やイケスの中に入れるフグの数など、毎年生育法を試し、最適な方法を探りながら養殖を行っています。松本さんが経営する松本水産では、松本さんを含め3名の従業員が日々トラフグ養殖に取り組んでいます。波多津町でのトラフグの養殖は、当初は松本さん1件だけでしたが、現在は3件に増加しています。
 松本さんの養殖したトラフグの出荷は、10月からはじまり、年末年始の忘年会、新年会シーズンに出荷のピークを迎え、終了するようにるように計画しています。大半は、業者を通じて大坂や福岡の料亭や専門店に出荷されますが、伊万里市内に出荷する分については、松本さんが直接配送し、10月から長ければ3月まで、その味が楽しむことができます。

▼地元の料理屋で修業し、自らフグを調理
 松本さんは、養殖したトラフグを業者に出荷するだけではなく、自らも何か加工、販売できないかと考え、自分自身が地元の料理屋で修業し、フグの調理免許を取得しました。業者に引き取ってもらうと安値になってしまう小さなサイズのトラフグを有効利用し「トラフグセット」を開発。自分で加工し、販売を始めました。
 この「トラフグセット」、販売当初は本当に売れるのだろうか?という不安もあったそうですが、松本さんのトラフグは、コリコリして食感が強いと口コミで評判が広がり、お歳暮のシーズンになると贈答用に人気があるそうです。
 この「トラフグセット」は、お歳暮用の限定販売ではないので、10月からトラフグの出荷が終わるまで、購入することが可能です。

▼地域の子供達に、トラフグを通じて魚に親しむ機会を提供
 最近、地元の小学校や幼稚園からの要望があり、子どもたちが松本さんの養殖現場を見学する機会も増えて来たそうです。最近は、漁港があり近くに海があるにもかかわらず魚のことをあまり知らな子供が多く、松本さんは「見学に来て、少しでもトラフグや『魚』に興味を持ってもらえれば。そして、波多津の港が、昔のように活気付けば良い」と語ります。
 松本さんは、最終的には隣の鷹島や下関のように「伊万里のトラフグ」をブランド化して、日本全国に知れ渡るようにしたい!と、意気込んでいます。
 昨年は、景気の落ち込みや天候不順が続いたため、消費が落ち込み、フグの価格が安くなり、経営的に大変厳しい状態だったそうです。
 「今はしばらく辛抱だが、フグの価格が上がり安定すれば、色々と取り組みたいことはあるので」と次のステップに備えてると、松本は語ってくれました。