地域別事例紹介

東 北               

  


    ●浜を元気にする人

     八戸鮫浦漁業協同組合  組合長 福嶋 一雄さん
     八戸鮫浦漁協小型船部会  会長 鳥島 幸男さん
     八戸鮫浦漁協小型船部会  会員 関野   稔  さん


八戸鮫浦漁業協同組合が元気な理由
1 ・クラゲ被害に負けないために新しい漁法へのチャレンジ
2 ・漁獲後の適切な処理によって付加価値を高めるアイディア
3 ・東日本大震災に負けない希望

▼きっかけは大型クラゲ襲来!「災いが福の種となる」
青森県八戸市は、青森県の太平洋側東南部に位置しています。八戸港は藩政時代から
「鮫浦みなと」の名で知られる漁港でした。現在八戸港へ水揚げされる主な魚種はイカ、サバで、数量全体の8割を占めています。他にもヒラメ・カレイ類、サケ、マダラ、タコなどが水揚げされますが、なかでもイカは、長年にわたって水揚げ日本一を記録しています。現在、八戸鮫浦漁業協同組合小型船部会に所属するメンバーは18名。平均年齢55歳ながら、若さとチャレンジ精神に富んだ面々です。

青森県は、昭和62年にヒラメを県の魚として定めた後、平成2年以降から実施した稚魚の放流と、全長35cm未満の再放流によって漁獲量が増加し、平成5年以降の18年間で、漁獲量全国1位に13回輝いています。漁業者たちは稚魚の放流や小型魚の再放流に積極的に加わってきました。
しかし、二つの大きな問題がありました。一つは、八戸鮫浦漁業協同組合ではヒラメを刺網で漁獲していたので、漁獲時にはヒラメは既に死んでいることが多く再放流があまり出来ないこと、もう一つは、操業時間が長い割には大型サイズのヒラメが漁獲できず魚価が安いという、資源管理面と漁業所得面における問題を抱えていたのです。

転機は平成10年に訪れました。大型クラゲの襲来で、刺網は大きなダメージを受け水揚げは0。一方、曳き釣りはダメージをほとんど受けませんでした。そこで、小型船部会の有志が集まり、目の前に広がる豊かな前浜で漁業を続け、次の世代へ繋げるため、刺網に替わる効率的で漁業収益が高い漁法の検討が始まりました。若い会員からも意見がどんどん出されました。ベテランも若者も真剣に話し合った結果、小型船部会としてヒラメ曳き釣り漁に取り組むことになったのです。
しかし、小型船部会に操業経験者は一人もいませんでした。そこで、市販品や中古品で漁具を揃え、港付近で練習を重ねてから漁場で本操業に入りました。波浪や潮流、風向きの変化に応じて潜航板を最適な位置に保つのは至難の業でしたが、仲間同士が集まり、水深に応じた引縄の長さや曳航速度などを話し合って習熟に勤めました。初めは小型のヒラメしか釣れません。そこで漁具を改良し、さらに沖で操業するようになると大型サイズのヒラメが釣れはじめ、漁獲量が増加しました。市場にも活魚売り場が設けられるなど、流通面においても活魚の価値を適正に評価する取り組みが見られ、魚価が大きくアップし、刺網と比較して約2倍の単価で取引できるようになりました。「少なく獲って、高く売る」ことが出来るようになったのです。
また、全長35cm未満の再放流も、釣り上げた直後の活力のある状態で実施できるため、資源管理上の問題も克服できました。


▼メンバーのアイディアによって生まれた新しい活〆方法が付加価値を高める
 「少なく獲って、高く売る」ためには漁獲後の付加価値を高めなければなりません。
そこで、平成20年6月に県も加わりヒラメの活〆出荷方法について検討を行いました。メンバーは築地市場などで消費市場調査を行いました。それらの結果に会員のアイディアを盛り込んだ「冷海水で蓄養してストレスを取り除いてから活〆する」方法について、2年間試験を実施しました。これにより、この方法が驚くほど鮮度を維持することが証明されました。一般的に鮮度評価には死後硬直が用いられます。完全硬直するまでの時間が長ければ長いほど良好な鮮度状態が保たれることになります。船上で活〆したヒラメは3時間で完全硬直します。通常実施されている安静蓄養方法では完全硬直まで24時間。ところが冷海水で蓄養した後で活〆したヒラメは完全硬直まで48時間もかかるのです。八戸鮫浦漁協協同組合の曳き釣りによるヒラメは鮮度が良いと評判です。


▼東日本大震災からの復興をも
 平成23年3月11日。八戸港も東日本大震災とそれによる大津波の被害を受けました。
そのため、八戸鮫浦漁業協同組合小型船部が始めたヒラメの曳き釣り漁法を青森県太平洋側全域で行う体制づくりはストップしています。しかしこの漁法の利点は計り知れません。
小型魚を活きの良い状態で再放流が可能なこと。大型クラゲの浮遊層よりも下層で漁獲するため大型クラゲの影響はほとんどないこと。単価アップによる漁獲収入に、刺網漁の半分近い経費節減効果(燃料代や資材費など)を加味すると収益は約5倍になること。さらに、新たに開発したヒラメの冷海水蓄養技術によって最も美味しいタイミングで消費者の食卓に届けられること。それも漁業者の顔が見える形で届けられること。
これらの利点は、「美味しい八戸のヒラメ」というブランドを作り出す大きな力となることでしょう。その希望によって大震災からの力強い復興を必ず達成できる事でしょう。

参考資料

ヒラメ曳き釣りによる漁家収入の向上

 (第16回全国青年・女性漁業者交流大会資料より)