地域別事例紹介

中 部               

  


    ●浜を元気にする人

     鈴鹿市漁業協同組合 青壮年部     矢田 良信さん
     元三重県津農林水産商工環境事務所 横田 圭五さん
     三重県漁業協同組合連合会        小野里 伸さん


三重県漁業協同組合青壮年部が元気な理由
1 ・青壮年部存続の危機に立ち向かう
2 ・繰り返す実験が生み出す明るい将来展望

▼二枚貝を用いた黒のりの色落ち対策試験を始めた動機
鈴鹿市は三重県北部、伊勢湾に面した人口20万人の都市です。鈴鹿市漁協には正組合員300名、准組合員137名が所属し、黒のり養殖、ばっち・船曳網、底曳網等を行っています。漁業生産金額は10億円で県内有数の規模を誇っています。
 鈴鹿市漁協青壮年部は、2011年現在50歳以下の若手漁業者38名で構成されています。青壮年部は何故黒のりの対策試験を始めたのでしょうか? 平成19年度に県営の中間育成施設が完成し、それまで青壮年部活動の大きな柱だった中間育成事業は青壮年部から移管されました。これにより、安定して良好な種苗が得られるなどの利便性は向上しましたが、青壮年部活動の回数が減り、このままでは青壮年部は消滅してしまうのではという危機感に駆られた部員たちは新たな活動目標を検討に入りました。
試験開始のいきさつを矢田さんと横田さんは次のように語っています。「鈴鹿では、黒のりの色落ちが非常に深刻な問題なのです。平成19年には黒のりが大不作となり、赤潮も発生して、青壮年部で何とかできないかと県の水産試験場に相談したところ、貝を養殖すると貝は赤潮プランクトンを食べるし、栄養源となるアンモニア態窒素を排出するのでいいのではないかとアドバイスをもらったんです。じゃあ青壮年部の活動として試しにやってみようかということで始めました」。そして「ただ貝を吊るすだけじゃあしようがない。科学的知見が取れたら後で効果がはっきりわかるからと、水産業改良普及員と水産試験場の方の協力をいただいて、黒のりの色落ち対策試験を開始しました。」


▼2年にわたる実験が生み出した明るい展望
 1回目の試験は平成20年11月末から3か月かけて実施しました。地元のアサリと青森県産のホタテガイを購入し、黒のり漁場のブイの下に垂下し、2週間ごとに二枚貝の成長や実入りの変化を測定、月に一回垂下場所と黒のり漁場のプランクトン量や栄養塩量の違いを調べました。結果は良好でしたが、この年は大規模な赤潮が発生しなかったため、二枚貝垂下による効果を十分調べることはできませんでした。
 そこで青壮年部は2年目の試験を平成21年の11月末から2か月半にかけて実施しました。今回はアサリ、ホタテガイに加え、三重県鳥羽産のマガキも使用して、黒のり養殖筏の間に垂下して2週間ごとにデータを取りました。さらに、一定期間垂下した二枚貝を用いて室内での栄養塩排出試験も実施しました。
 黒のりの生産は11月20日に始まりましたが11月25日に珪藻プランクトンの大発生があり、漁場の栄養塩量は低下し、黒のりは著しい色落ち被害に見舞われました。ところが11月28日に試験を開始した途端に、プランクトン量は急激に減少し、栄養塩量が回復するとともに徐々に色落ちも回復しました。漁期終盤の2月17日に再びプランクトンの大発生がありましたが、黒のりはやや色調が低下した程度で漁期始めのような色落ち被害には至りませんでした。漁期全体を通して考えると、試験2年目も栄養塩は豊富で、黒のり生産も概ね順調でした。しかし、室内試験をしたところ、二枚貝は栄養塩を排出していることがはっきりとわかりました。また、垂下した二枚貝も軟体部の乾燥重量が2倍から2.5倍に増加しており、品質も高いものでした。「貝の養殖は思っていたより手間がかかりませんでした。」 と矢田さんは語っています。 
黒のりの色落ち対策試験は青壮年部のこれからの活動方針に大きな影響を与えました。鈴鹿市漁協青壮年部は、漁業権免許を取得し、黒のり養殖と二枚貝垂下養殖を組み合わせた複合養殖を行うことで漁業経営の安定化と漁業収入を向上させるという目標に向かって、元気に活動を行っています。


参考資料

二枚貝を用いた黒のりの色落ち対策試験

 (第16回全国青年・女性漁業者交流大会資料より)