地域別事例紹介

千葉県南房総市           

 

   

●浜を元気にする人

営漁計画実行委員会連絡協議会の会員の皆さんと大野和也さん
東安房漁業協同組合総括参事 渡辺徹啓さん

千倉の浜が元気な理由
1  .自分たちで輪採漁場を造る
2  .継続は力なり

▼3年輪採で「つくり育てる漁業」へ
 「アワビが減り始めている!」昭和40年代後半、現在の東安房漁業協同組合千倉地域の漁業を支える「あま」たちはアワビの水揚げ量の減少を肌で感じていました。どうしたら水揚げ量の減少を食い止めることができるか、メンバーは旧千葉県水産試験場(現千葉県水産総合研究センター)とともに調査・研究を進め、毎年放流しているアワビの種苗をいかに効率よく漁獲に結びつけるかという課題に取り組み続けました。
 その結果、コンクリートの平板などで種苗の育成場を造成し、そこに種苗を放流すると種苗の回収率が向上することと、その育成場の種苗は3年で漁獲サイズの12cmまで成長することが分かりました。「農業ならば畑を3枚用意し1年に1枚種を撒くようにすれば毎年収穫できる。アワビも3つの漁場を造って1年に1漁場に種苗を放流していけば毎年漁獲できる」こうした考え方をもとに3年輪採の「つくり育てる漁業」の第一歩が踏み出されました。 昭和57年、アワビ資源の増殖による漁業収入の向上と経営の安定を目的に、千倉地域にあった5つの地区で、造成漁場による輪採漁場導入の取り組みが始まったのです。

▼粘り強い説得
 「コンクリートの板なんか海に沈めたら漁場が潰される!」アワビの天然の漁場が荒らされることへの不安から、輪採漁場の造成に対する地区漁業者の同意を得るのは簡単なことではありませんでした。
 何回も話し合いが繰り返された結果、5つの地区で30m×30mの輪採漁場の造成を始めることになりました。しかし漁協組合員全員の理解が得られたわけではありませんでした。アワビの生息にはあまり条件の良くない場所しか同意を得られずに失敗することもありました。しかし、その後も「あま」たちを中心とする営漁計画実行委員会連絡協議会の粘り強い説得は続けられました。 その結果、1年で理解を得られた地区もあれば、10年以上に渡って説得が続けられ少しづつ理解を得られた地区もありました。

▼先輩「あま」たちの努力が報われ始めた
 現在では、輪採漁場は43箇所、千倉の浜すべてに導入されています。ここ数年の水揚げ量の推移は年間5~6トン。この量は、千倉地域でのアワビ水揚げ量の約10~25%を占めています。千倉の浜一帯に広がる一般の漁場の面積に比べればあまりに狭小な漁場でこれだけの水揚げを確保できていることに、協議会に加わる「あま」たちの士気は上がっています。「あま」たちは一般漁場での収入に加え、輪採漁場での収入(約10万~70万円)が得られるようになりました。若い担い手も少しづつ増え、平均年齢は55.4歳と若返っています。東安房漁協の30年以上にわたる全面協力、南房総市の理解と支援、そして地元一般漁業者の理解と協力。これらすべては、先輩「あま」たちが粘り強く努力を重ねた結果です。先輩「あま」たちと現在の「あま」たちの“伝統のアワビ漁を守り続けたい”という熱い思いが千倉の浜を元気にしています。



参考資料

未来へ受け継ぐあまの ( こころ )

 (第19回全国青年・女性漁業者交流大会資料より)