地域別事例紹介

北海道広尾郡広尾町         

 

   

●浜を元気にする人

北海道 広尾漁業協同組合エゾバイツブ篭漁業部会 部会長   関下啓史郎さん
前部会長 鶴沢栄三郎さん
北海道 広尾漁業協同組合振興課        飯野貴洋さん
北海道 十勝地区水産技術普及指導所 普及員   荒木格さん

広尾町の浜が元気な理由
1  .廃業の危機からの再生
2  .年齢を超えた漁業者の熱意の共有

▼8名の部会員は全員一丸元気です!
 酪農で有名な北海道十勝地方。その南端広尾町は太平洋に面し、サケ、イカ、マイワシ、シシャモ、ケガニと豊富な海の幸に恵まれています。
 広尾漁業協同組合エゾバイツブ篭漁業部会の部会員は8名。82歳から57歳全員が一丸となって活動しています。
 元気の理由は漁業経営の危機を脱出し持続させる道筋が出来たから。所得も大幅に向上しました。平成20年に490万円だった1隻当たりの水揚げ金額が、平成26年には約1200万円に跳ね上がったのです。後継者も3人確保しました。
 どうしてこれほど元気になれたのでしょうか。


▼資源減少、共同経営も失敗
 広尾町のエゾバイツブ篭漁業の本格操業は平成元年。当初は年間300トンを超える漁獲がありましたが、乱獲のため漁獲量は年々減少し、平成9年には100トンを切ってしまいました。そこで平成11年、当時の部会員13名で共同経営を始めます。当時の部会員は2つのタイプに分かれていました。
 一方は北方漁業に見切りをつけ、新しい漁業としてエゾバイツブ篭漁を始めた人たちで所有する船は5トンクラス。
 もう一方は昆布漁などからエゾバイツブ篭漁に転向した人たちで所有する船は1トン未満。漁獲量が年々減少する中で開始した共同経営は漁獲を均等に配分するスタイルだったため、大型船は経費がかかりすぎ、部会員の間に不満が出て1年で中止せざるを得なくなりました。その後も資源回復の見込みはなく、無理な操業で死亡事故も発生してしまいました。

▼このままでは廃業しかない。2度目の挑戦
 「このままでは廃業しかない。ツブを増やさねばダメだ。」部会員の誰もがそれを感じていました。「どうしたら良いのか」。現在の部会長関下啓史郎さんは禁漁区の設置と新しいスタイルの共同経営で乗り切ることを提案、一人一人を熱心に説得して回りました。水産技術普及指導所も「この一画を採りきったら終わりになると」禁漁区設置を助言。禁漁区を設置しても「こっそり違反する人も出るかもしれない。新しい共同経営が必要だ。」関下さんの説得に応えて、大型船の部会員たちが小型船の部会員を説得にまわり、部会長の鶴沢栄三郎さんが全員の意見を取りまとめて、禁漁区の設置と新しい共同経営(漁獲だけでなく燃料費など全ての経費も均等に配分する)が平成21年にスタートしました。

▼一丸となって増殖活動
 部会員全員でエゾバイツブの生態調査と増殖活動に取り組みました。飯野貴洋さんの陸上大型水槽で飼育試験を行い卵塊を採取、それを天然海域で採取した卵塊と共に禁漁区に放流しました。増殖活動に役割分担はありません。ほぼ毎日全員が漁の合間に集まり、観察と作業に没頭しました。
 その結果、平成21年に36トンまで落ち込んだ漁獲量は平成26年には129トンまで回復できたのです。「採るだけ」から「育てて出荷する」への意識改革に4年かかりましたと関下さんは語っておられます。そしてこの活動の成功の秘訣は「全員が年齢に関係なく一丸になれたこと。それを可能にした一人一人の熱意です。」と結ばれました。


参考資料

育て!エゾバイツブ

 (第20回全国青年・女性漁業者交流大会資料より)