地域別事例紹介

兵庫県たつの市室津         

 

   

●浜を元気にする人

兵庫県 室津漁業協同組合かき養殖同業会 磯部公一さん
兵庫県漁業協同組合連合会指導部 宗和貴光さん

室津漁業協同組合の浜が元気な理由
1  .”日本最先端のかき養殖”
2  .豊かな海を有効に使える落ちがきキャッチャー

▼かき養殖の経験はまだ10年
 瀬戸内海に面した室津漁業協同組合では、船引き網漁業と小型底引き網漁業が営まれてきましたが、漁獲量の減少に伴い、冬場の副業だったカキ養殖をメインにする漁業者が増え、室津漁業協同組合かき養殖同業会が平成16年に6経営体で結成されました。
 磯部さんをはじめメンバーは日本中の有名なカキ養殖の産地を訪れ、それぞれの養殖技術の良いところを取り入れて室津漁協かき養殖同業界独自のかき養殖を行っています。
 室津のカキの成長は目を見張るものがあります。その理由を磯部さんは「室津は日本最先端のカキ養殖を行っているから」と豪語しています。
 その真偽はともかく室津では若者たちがカキ養殖に取り組んでいます。限られた漁場に大勢の青年漁業者を受け入れることができたのは何故なのでしょうか?その大きな力になっているのは磯部さんが開発した“落ちがきキャッチャー”です。












▼きっかけは「もったいない!」
 磯部さんが本格的にカキ養殖を始めたのは10年前。資金が足りなく養殖筏は4台しか用意できませんでした。風や波が高いとその4台からカキがバラバラ落ちます。
 もったいない、なんとかならないか。そんな思いで落ちがきキャッチャーの研究は始まりました。
 いろいろな形を試しましたが、どれも運搬や設置が困難な代物。そんな時に漁具の資材業者からバイ貝の鉄枠を何かに使えないかと相談を受けました。
 「この形だ!」と直感した磯部さんはそこに網を張った試作品を製作。とても扱いやすい。
 ところが直径が小さく落ちがきがこぼれてしまう。  そこで直径1.5mの落ちがきキャッチャーが完成しました。
 早速試してみると、漁期の途中からでしたが落ちがきの回収量は漁期1ヶ月分に相当しました。
 翌年は始めから 落ちがきキャッチャーを設置しました。磯部さんは10台の筏で養殖していましたが、落ちがきの回収でてんてこ舞い。10台の筏の作業が追いつかなくなってしまいました。
 データーを取ってみると落ちがきの量は全体の28%に相当します。それなら10台の筏を8台に減らしても漁獲量はアップする。水揚げ金額もアップする。しかも経費は下がる。良いことづくしです。設備投資の金額は1年で返せました。
 今、室津では若い人たちがカキ養殖を始めたいと思っています。
 落ちがきキャッチャーを設置すれば豊かな海を3割近く広く使えます。
 室津の浜では若いカキ養殖業者が増えることでしょう。落ちがきキャッチャーは海底に落ちて腐るかきの量を減らします。そのため兵庫県では補助金を出して設置を奨励しています。
 しかし室津の漁業者は1年で回収できるので自分で設置する方が増えています。またとなりの相生市や赤穂市の養殖業者も設置を始めています。
 磯部さんの情熱を支えたものは何でしょうか。「自分は考えて行う漁業が好きです。カキ養殖はこんなものという概念にとらわれたくはありません。カキ養殖にはまだまだやることがあるんです。」こういう漁業者のいる浜は確かに元気です。

参考資料

効率的で漁場環境に配慮したカキ養殖を目指して

 (第20回全国青年・女性漁業者交流大会資料より)