北海道増毛漁業協同組合
【ホタテガイ種苗生産技術の改良に取り組んで】
〜 早期分散開始から10年 〜


  北海道の増毛漁業協同組合ホタテ養殖部会では、養殖施設の環境調査と養殖技術の改良に取り組んでいます。

  増毛のホタテガイ養殖は、8割がオホーツク海向けの地まき放流用の稚貝生産で、その種苗は天然採苗に頼っています。そのため採苗の不振で種苗を購入することが何度もありました。また平成4年頃から採苗器にヒトデが混じるようになりました。このヒトデを除去するために1回の分散を仮分散と本分散の2回に分ける早期分散の技術開発に取り組み大きな成果を上げました。

  しかしその後、早期分散した後のサブトン篭にカニが混じるようになりました。 また食害や原因不明の稚貝の斃死が起こるなど様々な問題が生じ、海の環境が大きく変化していることに危機感を感じたといいます。

  「今の時代漁師の目だけではわからないことおおくあります。それをわかりたい」

  平成9年から自動記録式水温系で養殖漁場の水温観測を行い、稚貝がどのような水温にさらされているか調べました。 比較的水温が安定しているのは15m前後であることがわかり、平成11年から幹網を20mから10mまで浮かせた結果、早期分散稚貝の生存率が80%前後から90%以上に向上しました。

  平成12年4月から道立中央水産試験場の協力を得て、潮流計を設置して潮の流れを調査しました。この結果、増毛の養殖ホタテから生まれた幼生が、潮の流れとともに北上し、成長しながら増毛へ戻ってくると予想され、母貝育成の必要性を知ることになりました。

  海洋観測の取り組みは、小平漁協ホタテ養殖部会と共同で結成した若手後継者グループ「ホタテ・世会」を通して留萌管内一帯の活動へと展開しています。技術改良では、早期分散後に問題となったカニを取り除くために稚貝選別機の改良を行いました。 平成6年から試作に取り組み、9年に完成。カニを分別するフルイは、死殻を取り除くという思わぬ効果もありました。この改良で本分散作業は効率化され、人件費の削減、稚貝の活力低下の防止にもつながりました。

  「他の人にも使ってほしい。ただそれだけです。特許をとることは最初から考えていませんでした」

  このような取り組みは、ここの経営体でできるものではなく、部会で十分話あわなければいけません。部会の結束が以前にもまして強まったようです。こうした積み重ねが実を結び、稚貝生産量は平成4年の1億5千万粒から、13年には2億5千万粒と10年前の1.7倍にまで増加しました。

  「機械を頼ることで、漁業は女性でも出来るということをわかってもらいたい」 「一生漁師でいたい、死ぬまで漁師をやり続けたい、それが本音です」

  漁師の心意気と海洋環境にあった技術改良。 今後は、海洋データに陸上の気温、降雨量などのデータを組み合わせて、海洋環境の予測ができる手法の確立を目指すなど積極的な活動を展開していくそうです。