【浜の母さん食堂】
北海道斜里町/ウトロ漁協婦人部


  ウトロはオホーツク海の最東北端に突き出した知床半島のほぼ中間に位置し、主な産業は漁業と観光です。知床半島は千島列島から続く火山帯の一部を成しており、活火山の羅臼岳、硫黄山などからなる知床連山、長い年月による流氷の侵食によって造られた海岸線を有し、またオオワシ、オジロワシ、トド、ヒグマ等、数多くの鳥類・動物たちが生息している自然美豊かな土地で、この雄大な大自然を目的に毎年200万人以上の観光客が当地に訪れます。

  知床半島のほぼ中間に位置するウトロ漁協は、昭和24年、組合員数61名により発足し、当時、定置網漁業権をもたないほとんどの組合員は、樺太や北方四島等からの引揚者であり、知床半島の未開地域に入り、新漁場の開拓を行うなど、大変厳しい状況での組合設立であったと聞いております。その後の相次ぐ経営危機をも乗り越え、平成11年には無事50周年の佳節を迎えることができました。

  現在組合員数は正組合員180名、準組合員10名で構成されています。主な産業は、さけ定置漁業で、他にうに、ほたて、刺網、毛がに、たこ、ます小定置網漁業があります。平成11年度の総水揚量は合計8175.5トン、約20億円の水揚高を上げることができました。増養殖事業は地場産親魚から採卵し、2cm前後の稚魚を育て約100尾放流しました。年々、オホーツク海も水温が高くなり、厳しい状況ではありますが、21世紀に向けて、獲る漁業から育てる漁業へ試行錯誤で頑張っています。

  婦人部は昭和29年に63名の有志によってウトロ組合婦人部貯蓄推進委員の名称で設立されました。現在の部員数は123名、その内の31名が若妻会を結成しています。若妻会は昭和63年に発足し、当時の部員数は若妻会を含めると150名近くいましたが、年々減少し、現在の人数となっています。平成10年度には婦人部の規約も正組合員の奥さんは、自動的に婦人部員になると規約改正しましたが、少しずつ減少しています。役員は推薦で部長1名、副部長2名、会計1名、理事2名、監事2名、若妻会々長1名、副会長2名、計11名で構成されています。
  部員は13の班に分かれ、各班に班長、貯金係をおいて、班長は各種行事等の回覧、及び参加人員の取りまとめ等、貯金係は箱貯金の回収に協力して頂いてます。
  1年間の主な活動としては、漁港清掃、スポーツ交流、漁村セミナーの開催、料理講習会等、また、“お魚殖やす植樹運動”では組合員の方々にも協力をいただき、100年、200年先に向けて豊かな森を育んでほしいとの願いを込めて植樹します。最近の社会現象同様、部員の高齢化が進むなか、健康に留意するため網走脳神経外科の協力を得て脳ドックの検診を2年に1回実施しています。 ボランティア活動は、若妻会が中心となって部員からタオルを集めて雑巾を作り、老人ホーム、ウトロ小中学校、ウトロ保育所に寄贈し、皆さんからたいへん喜ばれています。地域活動としては、斜里町内のJA女性部、商工婦人部、自治婦人部、二葉会、斜里第一漁協婦人部、ウトロ漁協婦人部の6団体の代表が集い、交流を行います。意見の交換と各施設への訪問、そして、明るく住み良い町づくりのために町長との対話集会を開いて女性の立場で意見反映を行っています。平成11年には婦人部創立45周年記念の佳節を迎え、6泊7日の九州旅行に行き、楽しい想い出をつくることができました。
  部員の減少傾向のなか、機関誌『灯台』の発行を行い、これら1年間の活動内容をまとめて、部員に報告し、婦人部活動を理解願ってます。これからの活動の運営資金は、婦人部員さんの年金費と婦人部実践活動の一環として食堂を経営しており、その売上の利益でまかなっています。

  婦人部活動資金の大半となっている食堂経営は、昭和40年頃、ウトロ港ねはイカ漁船が入港しておりました。当時のウトロは地域開発が進んでいなくて不便でしたので、当時の組合長から「婦人部で日用雑貨の店を出して欲しい」と頼まれて出したのがきっかけでした。当時の部長さんは、お客相手の仕事は始めてで“いらっしゃいませ”がなかなか出てこなくて大変苦労したとのことでしたが、だんだん慣れてきて今度は食事のメニューにも挑戦し、うどん、そば、おにぎりと地元漁業者は元より観光客にも利用していただき、現在に至っています。

  現在では『ウトロ漁協婦人部食堂』と名称が変わりました。33坪で21席と狭い店で、お店の外観と内装は昔と同じです。この小さな店で5月〜11月の半年間で1.000万円以上の売り上げがあります。営業時間は午前8:30〜午後4:30迄、定休日は日曜日です。従業員は2名、昼時の忙しいときには4名になるようにローテーションを組みます。また、7月、8月は観光客でいっぱいになるので、学生アルバイトも頼みます。
  観光客には特に、2,300円のウニ丼がよく売れます。暖かいご飯の上に磯の香りがする甘いウニがたっぷりと乗っていて、とても美味しいです。5月から8月のウニ漁期には、1個250〜300円の殻付きウニがよく売れます。その他にはいくら丼、ホッケ定食も人気があります。また、丼物、定食にはウトロでとれたふのりのみそ汁が付いています。とても好評で帰りにはお土産用として購入していただいています。ふのりは1袋30g入1000円で販売しています。漁場の方、仲買人のかたにはラーメン、カツカレー、日替わり定食も人気があります。
  漁師の人たちを中心に営業してきた食堂も観光客が増えて、最近では釣り人も増えてきて、とても活気づいてきましたが、そのための浜の母さんの愛情いっぱい詰まった小さな店は、とても満員で、嬉しい様な大変な毎日です。忙しいと一人がやっと通れるカウンターの中での作業なので、洗い物、仕込み、レジと目まぐるしく動かなくてはならないからです。昨年は良いスタッフに恵まれましたが、実は平成5年〜7年の3年間は従業員が見つからず、とうとう人に貸すことになってしまいました。婦人部組織で営業しているので、役員の任期によっては経営も微妙に変わってしまい、従業員が戸惑ったこともありました。また、婦人部食堂は毎日忙しくて大変、ホテルなどのパートに出る部員さんも多くなった等いろいろ原因がありました。でも、やはり自分たちの活動資金源である食堂を自分たちの元に戻そうとの思いで、平成8年には自分たちで営業を再開することが出来ました。

  再会して5年目が過ぎましたが、いまだに毎年従業員の問題が一番の悩みです。しかし、先輩が立ち上げてくれたこの食堂をこれからも営業し続けていけるように、皆で協力して頑張っていきます。
  婦人部活動を通して地元の漁師、又、観光客の方に「おいしいよ、おいしいよ」と食べていただけることが私たちの喜びであり、また励みにもなります。今は家庭でも魚離れが進んでいます。輸入の安い魚が出回り調理しやすいように加工されていて、便利になりましたが、浜からの新鮮な魚はとにかく美味しいです。その味を壊さず工夫して美味しく食べていただける様に、これからも食堂を通して地場水産物を観光客や地元の方々に紹介し、消費拡大に努力していきます。
  婦人部組織の面では、総会、年間行事等の出席率が年々減少していますので、皆が喜んで参加できる企画・運営を考え、一人一人がともに協力していけるように組織の充実を図っていきたいと考えています。
  また、地球温暖化などが進むなか、積極的に環境問題についての勉強会を開催できるようにと思っています。合成洗剤を含む生活排水などで河川や海が汚染されて、魚介類に影響を及ぼしています。先輩の時代にも海にやさしい石鹸を使用しましょうと年間の活動にありましたが、日々の生活が豊かになり、便利になり、いつしかお互いに忘れてしまいました。私たちの生活は海が基盤になっています。未来に豊かな海を残してゆくのは、私たち婦人部であると自覚し、部員一人一人が出来ることから始める努力をしていく決意です。

(第6回全国青年・女性漁業者交流開会資料より)